40代の私が「人生つまらない」と思った時に心に響いた映画「夜明けのすべて」

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朝起きて、仕事・家事・育児をしてご飯食べてお風呂入って寝る。変わり映えのしない毎日を送っているとふと「つまらない人生だなぁ」と思う時があります。子供もいて幸せなはずなのですが、それでもむなしさを感じる時があるのです。そんな時に私の気持ちをほんの少し軽くしてくれた映画がありました。

それが松村北斗さん主演の「夜明けのすべて」です。

物静かな映画なのですが、気づかないうちにカチカチの心を溶かしていってくれました。大きな衝撃や刺激があるわけでもないのに、観てる時も、観終わった後もその温もりがずっと残る。穏やかな木漏れ日のような映画でした。

「夜明けのすべて」のあらすじ ※ネタバレ注意

  • 作家:瀬尾まいこ(代表作:そしてバトンは渡された)
  • 監督:三宅唱

PMS(月経前症候群)による感情の波に悩む藤沢さん(上白石萌音)と、パニック障害によって生活が大きく変わってしまった山添くん(松村北斗)。

同じ会社で働く二人は、互いの事情を知るつれ、少しずつ理解を深めていきます。恋愛とは違うつながりの中で、自分自身のつらさを抱えながらも、相手のためにできることを見つけていく物語です。

【登場人物】

  • 藤沢さん(上白石萌音)・・28歳。栗田金属勤務。PMSの症状で会社や公共の場でも怒りを抑えられない
  • 山添くん(松村北斗)・・パニック障害になり、単純作業の栗田金属に転職。アットホームな人と距離感の近い会社の雰囲気が苦手
  • 栗田社長(光石研)・・栗田金属の社長。寛容でみんなを見守る
  • 辻本(渋川清彦)・・山添が以前勤めていた会社の上司。
  • 藤沢さんの母(りょう)・・娘を心配して世話を焼く。
  • 角田(久保田磨希)・・栗田金属の女性社員。世話好きで温かい女性。

この映画で、私の気持ちが少し軽くなった理由

厳しい現実の中でそれぞれが抱える悩み

藤沢さんと山添くんの抱えている病気、PMSもパニック障害は自分の意思だけではコントロール出来ず、いつ治るかもわかりません。栗田金属の社長、山添の上司の辻本さんも長い間、大切な人の死で出来た心の穴を埋められずにいます。一見、何の悩みもなく幸せそうに見えても、皆それぞれ多かれ少なかれ悩みを抱えて生きています。

そして映画の登場人物たちと同じように、私自身の人生も思うようにいきません。思い描いていたルートから外れ、遠回りして、道に迷いながら生きています。

順風満帆に見える人生にも突然、思いもよらないことが起こります。現実の厳しさに立ち止まってしまうこともあるのではないでしょうか。

小さなやさしさの連鎖

この「夜明けのすべて」では、人のやさしさが随所えがかれています。

栗田金属の社長は、会社の経営が難しい中、社員みんなを温かく見守ります。病気による難しさを抱える藤沢さん(上白石萌音)、山添くん(松村北斗)を雇い、同じように温かく見守ってくれる寛容な人です。

山添の元上司・辻本さんは、山添くんが退職した後も気に掛けています。山添くんの愚痴や前の会社に戻りたい気持ちなど、胸の内を電話で聞いていました。私は、はじめ退職し関係なくなった山添くんの話を流して聞いているのだと思っていました。でも、違いました。本当に心配し何とかしてあげたいと思っていたのです。父親の様にやさしく寄り添い続けているのです。

栗田金属の社員さんたちも、必要な時にただ寄り添い、相手に気を遣わせないさりげない優しさで、相手に何も求めていないのが伝わります。栗田社長の寛容さは社員達へ、社員達のやさしさは藤沢さんや新しく入った山添くんへ広がっていくのです。いつも温かい空間の中で、藤沢さんも、山添くんも、泣いたりわめいたり怒ったり落ち込んだり笑ったり優しい気持ちになったり、人間らしい毎日を送っていきます。

それぞれに悩みを抱えながらも誰かのやさしさに支えられ、自分もまた誰かを思いやる。その姿に、金子みすゞの詩を思い浮かべました。映画を観た後、私は自宅の本棚から詩集を探しました。

金子みすゞ童謡集、明るい方へ。

恋愛とは異なる人とのつながり

この映画で私が魅力を感じたのは、二人の関係が恋愛に発展しないところです。藤沢さんと山添くんは年齢も近く、時間が経つにつれてお互いを思いやったり、理解しようとしたり、時には互いの家を訪ねるなど、少しずつ距離が近くなっていきます。ですが異性として意識して優しくしているわけでも、さみしさを埋めるわけでもありません。人と人としてお互いを尊重し、分かりあっていくところにとても魅力を感じました。

今ある暮らしの中にも、しあわせはある

夜明けのすべて やさしい光がさしこむ町のイラスト

山添くんはパニック障害にならなければ第一線で働き続けていたのだと思います。人生は時に残酷で、山添くんも藤沢さんも持病がきっかけで失ったものがありました。けれど、その中で一生懸命生き、もがきながら、今の暮らしのすぐ足元にある幸せに気づいていく。そんな山添くんと藤沢さんの姿にじわっと胸が熱くなりました。

この映画を観て、私もつまらないと感じていた毎日の中にある、小さなやさしさや温もりに目を向けてみたくなりました。暮らしは変わらなくても、その見え方がほんの少し変わる。私にとって「夜明けのすべて」はそんな映画でした。

実際には、みんな自分の生活を守るのに精いっぱいになる時があります。それでも、この映画のように温かい場所や、人の気持ちに心から寄り添う人は実際にいるのだと思います。私も、そう感じた経験があります。

けれど、すぐそばにいる大切な人や、受け取っているやさしさは、当たり前だと思って見過ごしてしまう事もあります。この映画を観て、そうした温かさに気づき、私も大切にしていきたいと思いました。

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